おススメ本 昭和のエートス

日本辺境論で有名な内田樹先生が様々な媒体に寄稿したものを
一冊に、しかも文庫本にまとめたものが文春文庫 昭和のエートス

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失われてしまった、あの暖かい、緩やかな昭和的なるものを追慕しながら
憲法、教育、映画、さらには夢の隠居生活まで、森羅万象を軽快に語る名エッセイ

憲法改正が政治のテーマのひとつとして盛んに論じられている。

いや、論じられているというより、憲法改正ありきが先行している。

この本にある“改憲派に訊きたい二つのこと(2008年)”、“憲法を改正しないことがもたらす利益(2007年)”
を読んでいると、数年後の今の時代にとっても色あせていない。

いや、それどころか、憲法改正という一種のパッションみたいなもので忘れてしまっているものを思い起こしてしまう。

過ぎ去った昭和の時代を懐古主義一辺倒で振り返るのもおかしいかもしれない。

さりとて、時代の流れというウィルスみたいなもので全てを否定するのもいかがなものだろうか?

幕末があって、明治維新があって、富国強兵の明治時代があって、大正デモクラシーがあって、
日中戦争から太平洋戦争があって、終戦があって、戦後復興があって、高度経済成長があって、
公害があって、昭和が終わって、平成の時代に突入して、バブルがはじけて、失われた十年があって、
政権交代があって…

この歴史の五線譜の流れに沿って今の我々が存在しているはず。

変えなければならないこともあれば、変えてはいけないこともある。

よかったものもあれば、悪かったものもある。

この本の中で“昭和人”の定義がなされている。

敗戦を挟んで「断絶以前」の自分と「断絶以後」の自分との不整合を
個人的な葛藤として苦しんだ人々とある。

この葛藤があるがゆえに、結果的に彼らに例外的な知的深みを与えた。

その昔、明治は遠くなりにけり!という言葉があった。

幕末から明治生まれで激動の大正、昭和を経験された方々、いわゆる明治人が
高度成長期の後半に発した言葉である。

そこから戦後の高度成長期に貢献された団塊の世代といわれる昭和人が
先人からある種のアイデンティティーみたいなものを受け継いできた。

平成の時代を生きている我々は昭和の時代を知っている者もいれば
平成生まれの人間もいる。

昭和の時代に生まれ、平成の時代に生きる人間こそ、明治、大正、昭和と
受け継がれてきたバトンを、いいことも悪いことも時には検証しながら、
平成人に受け渡していかなければならない。

それには激動の昭和の時代をしっかり検証しなければならない。

前を一直線に向くのもいいが、あくまで過去があって、現在があって、その流れに未来がある。

そんな中で改めて“昭和の時代”を見直すキッカケにおススメなのが昭和のエートス

昭和のエッセンスが詰まっているような気がするのだが…(ペコリ)
by mitsuketai | 2013-07-25 19:57 | おススメ本